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鋼鉄と死

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「ねえ」とキミは僕を見上げた

「あなたはいつから此処にいるの?」

随分、昔のことだったような、憶えているつもりの あの日々は

僕がいつのまにか積み上げた ユメのつぶて?

開いたままの手掌は キミを包み込めるほど器用じゃない

なのに キミは

「大きい」と頬を摺り寄せる

頬が錆で 赤く染まってしまうよ と 声を出す方法も忘れてしまった

どうしよう と オロオロと反復する思考だけが 僕であることの欠片

キミは 茂みの中から花を摘んでは 僕の腐食した足や 手に挿してゆく

その度に 僕を見上げて微笑んでは 何かを言付けてゆくのだけれど

僕は生まれたときから おしで つんぼだったような気がして

もう 太陽が西の方に落ちそうだよ と

いつのまにか 僕の足元で うとうとと眠りにつくキミが風邪を引いてしまうのではないかと

伝えたいという思いに駆られては ピクリとも動かない手足を恨む

しまいには 悠久の時を超えて 勇者が僕の呪縛を解くため 

今 最後の敵と死闘を演じていると 妄想が 真実にすりかえられて

蜘蛛の糸のような 儚い希望を信じる根拠が

キミなんだよと いつのまにやらループし始めた思考が

僕がキミに そっと毛布をかけるときが

キミのゆっくりとした寝息に耳を傾けながら 明日には来る と信じることにした


ねえ キミ 風邪を引くから 起きて おうちに帰りなよ

明日 キミが行きたがっていた ケモノ道の向こうに連れて行くからさ
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by 60co | 2005-10-31 16:14 | 詩。

ピカン

暗がりの中で 雫が落ちる音がした

何もないことが

絶望と言うなら

涙が頬を伝う感触は

それが 僕の病巣を洗う

温かな木漏れ日なのだろう

死と言うものに 臆病になり

自分の手首をカッターで傷つけるように 君への手紙を送り続けた

紙であるならば 

何百年後に 君に届いたとして

考古学者が解読してくれるかもしれない

そして 君はクスリと 僕の手紙を読んで笑い

こういうのを 絶望と言うのだと

銀塩に焼き付けた
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by 60co | 2005-10-25 10:06 | 詩。

PAY DAY!!!

[書評部門] 『PAY DAY!!!』

Pay day!!!
山田 詠美 / 新潮社
スコア選択: ★★★★

  


   ツイてない。読み始めたのは給料日の後だった。明細にだけある数字。一度だけでも丸々受け取りたいものだ。通帳を見て、いつもより嫌に少ないと思ったら、車の修理代が引かれていた。おいおい、まだローンも終わっていないのに。薄っぺらいサイフを投げつけて「こんちくしょう」と思いっきり叫んだ。そして、慌ててサイフを拾いにいった。まだ、次の給料日まで1ヶ月弱あるじゃないか。雀の涙でも無いよりましということ。だけど明日のデート、あいつは映画を観たいって言ってたっけ。待ち合わせの時間遅らせて、偶々、レイトショーの時間になったことにしよう。そう、偶々じゃなきゃ駄目なんだ。金をケチってるなんて思われたらかっこ悪い。そんな考えがけち臭い?いいじゃないか。女の前では男は大きく見せなくちゃいけない。そう孔雀みたいに。出来るだけ羽根は煌びやかに広げなくちゃいけないんだ。そうでなくちゃ、とてもベッドまでは辿り着けないさ。それが、健康のためにと始めた通勤の時のウォーキングが実は一駅分の電車賃を浮かせるためだったという秘密を抱えることになってもだ。

  裸を見せ合うのに大層な理由はいらない。が、裸の心を見せ合うには相当な覚悟とメリットがなくてはいけない。レイが誇りを持って「いとしのエリー」を歌い上げたように。ロック?ポップス?歌謡曲?それとも演歌?いや、それはブルース。世界の東の果てで生まれたこの曲を躊躇いもなく。誰かが言う「日本人は音楽を知っているのか?」。連中は日本は市場としては魅力だが、インスピレーションを受けることはなかったと謳った。「そうじゃない」とレイは楽しげに鍵盤を叩いてエリーに囁く。悲しみや死だけがブルースじゃない。君を好きだと思うこと。君を歌うこと。それだけじゃない。昨日何気なく交わした言葉それさえもブルースだと。だから、もがく事を忘れちゃいけないんだ。ツインタワーが砂の城のように崩れた日。ぽっかりと空いた心の浴槽を憎しみでも、愛情でも、欲望でも、誰かの口づけで満たしてもいいじゃないか。何か一つの想いを持たなくてはいけないなんてことはない。だって、9月11日の4日後は僕の給料日。また大事なモノが産まれてくる。何の根拠もなくそんな気がする。読み終えた後のこの昂ぶりは給料日前だからだろう?アンクル・ウィリアム!!!
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by 60co | 2005-10-05 10:40 | 読んでみた。